不倫の慰謝料請求を行った際、相手方から「分割で支払わせてほしい」と申し出を受けることがあります。確かに一括での支払いが困難な状況もあるでしょう。しかし、感情的にも法的にも複雑なこの問題において、分割払いに応じることは、どのような意味を持つのでしょうか?
今回は、分割払いに応じることのメリットとリスク、そしてその対策について考えてみましょう。
分割払いに応じるメリットとは?
慰謝料の分割払いに応じる最大のメリットは、「支払能力が低い相手からでも、現実的に慰謝料を回収できる可能性がある」という点です。
例えば、相手に一括で支払うだけの貯蓄や資力がない場合、強硬に一括払いを求めたとしても、相手が支払不能で開き直るリスクもあります。結果として、全額が未回収になってしまうという最悪のケースもあり得ます。
その点、分割払いであれば、たとえ少額ずつでも慰謝料が支払われる見込みが立ちやすく、一定の実効性が期待できます。
しかし、長期化には要注意
一方で、分割払いには明確なデメリットも存在します。特に注意すべきなのは、「相手との関係が長期化すること」です。
慰謝料というのは、過去の不貞行為に対する清算であり、被害者側としては早期に心の区切りをつけたいところ。しかし、分割払いに応じてしまうと、毎月の支払確認や遅延対応などを通じて、相手と定期的に連絡を取る必要が生じます。 ときには、相手方が支払いを遅延させたり、突然連絡が取れなくなったりするケースもあります。特に、数年単位の長期分割にしてしまった場合、その間ずっと精神的なストレスや不安を抱える可能性があることを、忘れてはなりません。
遅延への対策:「ペナルティ」を明記しておく
もし分割払いに応じる場合には、万が一支払いが遅れたときの対策を契約書(示談書や合意書)にきちんと盛り込んでおくことが不可欠です。
具体的には、
- 支払いが1回でも滞った場合には、残額を一括請求できること(期限の利益の喪失)
- 一定期間連絡が取れない場合の違約金や法的措置の明記
- 遅延損害金の割合(民法では年3%、契約でより高い設定も可能)
などをあらかじめ取り決めておくことが、のちのトラブル防止に大きく貢献します。
また、可能であれば支払いの保証人をつけたり、銀行口座からの自動引き落としにして、確実性を高める工夫も有効です。
結局どうするべき?判断に迷ったら弁護士へ
相手との関係性や支払い能力、金額の大きさ、支払い期間などを総合的に考慮する必要があるため、「分割払いに応じるか否か」は非常に難しい判断です。
そのため、法律の専門家である弁護士に相談するのが最も安心で確実な方法です。弁護士であれば、相手方との交渉、分割払いの条件設定、合意書の作成、万一の強制執行の手配まで一括してサポートしてくれます。
特に慰謝料のような感情的な要素が強い問題では、当事者同士での交渉が長引くことで精神的ダメージが大きくなりがちです。早期解決・適切な保全のためにも、専門家の助けを得ることを強くおすすめします。
まとめ
不倫慰謝料の分割払いは、現実的な回収手段となる一方で、相手との関係が長期化し精神的な負担となるリスクも孕んでいます。分割払いに応じる場合は、遅延リスクへの備えや適切な契約内容の整備が不可欠です。
そして、少しでも不安や迷いがある場合は、弁護士に相談して最善の解決策を選ぶことが、あなた自身を守る第一歩です。