離婚と財産分与──不倫した・しないに関係なく「公平」に分けるのが原則です

2025年10月06日

離婚に際して、多くの夫婦が直面する問題のひとつが「財産分与」です。慰謝料とは異なり、財産分与は夫婦が協力して築き上げた財産を公平に分け合う制度です。
意外と知られていないのが、「不倫した側だからといって財産分与の権利を失うわけではない」という点。離婚に至った原因にかかわらず、財産分与は“貢献度に応じて公平に”が原則なのです。

今回は、離婚時の財産分与について、その仕組みや対象になる財産・ならない財産のポイントをわかりやすくご説明します。

財産分与とは?目的と仕組み

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に分け合う制度です。日本では「民法768条」に基づいて定められており、貢献度を問わず基本的には2分の1ずつ分けるという考え方がとられています。

「夫が会社員として稼ぎ、妻が専業主婦として家事・育児に従事した」といった場合でも、夫婦それぞれが家庭に貢献してきたとみなされ、財産は原則として平等に分けられます。

不倫した側でも財産分与は請求できる?

よくある誤解に、「不倫した配偶者には財産を渡さなくていい」と思い込んでしまうケースがあります。しかし、財産分与の目的は「過去の貢献に対する清算」であって、「離婚原因に対する罰」ではありません。

つまり、不倫や暴力といった離婚原因がどちらにあるかに関係なく、基本的には夫婦が築いた財産は公平に分与されます。もちろん、悪意のある隠し財産や浪費がある場合は考慮されることもありますが、それでも原則は「公平な分与」です。

離婚の責任を追及する場合は、財産分与とは別に「慰謝料請求」という別の法的手段をとる必要があります。

対象となる財産:結婚してから築いた「夫婦の共有財産」

財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して得た「共有財産」です。具体的には、以下のような財産が含まれます:

  • 預貯金(名義に関わらず)
  • 給与収入
  • 自宅や車などの動産・不動産
  • 株式や投資信託などの金融商品
  • 退職金(将来分も含まれるケースあり)

たとえ名義が夫または妻のどちらか一方になっていたとしても、実際に婚姻期間中に形成されたものであれば、それは共有財産とみなされます。

対象外となる財産:結婚前や相続・贈与で得た「特有財産」

一方で、以下のような財産は原則として財産分与の対象にはなりません。これを**「特有財産」**といいます。

  • 結婚前に貯めていた預金や所有していた不動産
  • 親から相続した財産
  • 親族などから個人的に贈与されたお金や物

たとえば、婚姻中に親が亡くなり、片方の配偶者が相続した土地や遺産がある場合、それは原則として共有財産とはみなされません。夫婦の協力によって得たものではないからです。

ただし、相続した財産を夫婦のために使っていた(例:相続で得たお金で住宅を購入した)場合には、一部が共有財産と判断されることもあるため注意が必要です。

財産分与はいつ、どうやって決まる?

財産分与は、通常、離婚時に当事者同士で話し合い(協議)によって決めるのが一般的です。しかし、話し合いで折り合いがつかない場合は、家庭裁判所に「調停」を申し立て、最終的には「審判」によって決められることもあります。

重要なのは、「離婚後2年以内」に請求しないと財産分与の権利が消滅するという点。時間が経てば経つほど証拠や資料もそろいにくくなるため、できるだけ早めに手続きに取りかかることが望ましいでしょう。

まとめ:冷静に、そして専門家と共に判断を

離婚の局面では、感情が先走りやすくなります。しかし、財産分与はあくまで「過去の貢献に対する公平な清算」です。不倫や離婚原因の有無ではなく、夫婦で築いた財産をどのように分けるかが問われる場面です。

名義や収入の大小にとらわれず、結婚生活の中で築かれた財産を丁寧に把握し、冷静に分与を進めることが重要です。そして、不明点や不安がある場合には、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談することで、トラブルを避け、納得のいく離婚後の生活設計につながるでしょう。

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【記事の監修者】

松山 哲彦(九州総合法律事務所 代表弁護士)

福岡県弁護士会所属 第44478号

「不倫にお困りの方の力になりたい」という思いから、不倫慰謝料請求の専門チームを立ち上げました。相談実績3万5000件以上。不倫関連にお困りなら何でもご相談ください。