離婚にあたって最も大きな問題の一つが「親権」です。かつては「親権=母親に渡るもの」というのが通例でしたが、近年では社会の意識や司法判断の変化により、父親が親権を取得するケースも着実に増えています。
2024年の民法改正によって、2025年5月には「共同親権」が施行予定となっており、これまでの“どちらか一方が親権を持つ”という制度も見直されようとしています。
今回は、これから離婚を考える方に向けて、「親権を取るために重要なポイント」や、今後の制度の変化について解説します。
親権の判断基準は「子どもの利益」
まず大前提として、家庭裁判所が親権者を判断する基準は「どちらが親としてふさわしいか」ではなく、**“どちらと暮らすことが子どもの利益になるか”**です。
つまり、過去の過ちや性格の善し悪しではなく、子どもの現在の生活・将来の安定にとって、どちらが適しているかが問われます。
その中で注目されるのが、以下のような要素です:
- 現在の養育実績(誰が育児の中心を担っていたか)
- 子どもとの精神的結びつき
- 生活環境(住居、学校、周囲の支援など)
- 経済的基盤
- 他方の親との関係性(子どもが会える状況か)
「母親有利」は今では一概に言えない
かつては、特に子どもが乳幼児の場合には「母親が親権を持つのが自然」という考え方が主流でした。しかし近年では、「父親も育児の中心を担っていた」という記録があれば、親権を取得できるケースも増えています。
たとえば、父親が
- 保育園への送り迎えをしていた
- 食事やお風呂、寝かしつけなどを日常的に担っていた
- 子どもの生活に関わる記録(写真、LINE、日記など)を残している
など、育児の実態を証明できる資料がそろっていれば、裁判所も父親側に親権を認める可能性があります。
また、「看護補助者」や祖父母が実質的な子育てを担っていた場合、「実の親が育児に関わっていなかった」と判断されるケースもあるため、母親側が必ずしも有利とは限らなくなっています。
生活環境や子どもの年齢も重要
親権者を決める際には、子どもがどんな環境で暮らすかも重要なポイントです。具体的には、
- 転居を伴わずに今の学校や保育園に通えるか
- 親族や周囲の支援体制が整っているか
- 一人親になっても就労と育児を両立できる体制があるか
など、子どもにとって“安心・安定”な環境があるかが評価されます。
また、子どもがある程度大きくなっている場合(おおむね10歳以上)には、本人の意向も尊重される傾向があります。実際に家庭裁判所では、調査官が子どもに面談を行い、その意見を考慮に入れることもあります。
共同親権の導入が与える影響
2026年4月には、民法の改正により「共同親権」が日本でも導入される見通しです。これにより、離婚後も父母の双方が親権を持つことが可能となります(協議または裁判で決定)。
これまで日本では「単独親権」が原則で、どちらか一方が親権を持ち、他方は監護権(実際に育てる権利)も持たないという形でしたが、これからは
- 父母の合意があれば両者で親権を持ち続ける
- 教育や医療などの重要事項も両親で決める
- 面会交流がより積極的に確保される
といった形で、親子関係を離婚後も維持しやすい環境が整備されていきます。
ただし、現実には別居や連絡が難しい家庭も多く、共同親権が万能な解決策になるわけではありません。今後は「親同士が協力して子育てできるか」という点が、より問われることになるでしょう。
まとめ:親権を望むなら、日々の育児実績を記録しておこう
親権を希望するのであれば、「どれだけ子どもに関わってきたか」「今後どれだけの育児体制があるか」を客観的に示すことが重要です。
日々の送り迎え、食事、遊び、病院対応など、小さなことでも育児実績を証明する材料になります。また、離婚に至るまでの期間で、感情的な衝突を避け、子どもを第一に考える姿勢を示すことも、家庭裁判所からの評価につながります。
そして、親権の問題は感情論だけでなく、法的・制度的な判断が関わってきます。少しでも不安がある場合は、家事事件に詳しい弁護士に相談することで、的確なアドバイスが得られるはずです。